Nobility Stranger B

ロミオのページ(【実家関係】)を読んで頂けると話がわかりやすいかと思います


所々で撮影を行いながら探索を進めていく一同だが、想定外のことがあった。
予想より明らかにダーカーの数が多いのである。

ルリ 「……ふーっ」
マリン 「…おかしいですね。 もっと静かな場所を想定していたのですが…」
紅覇 「ダーカーの数が多いな」
シャムシール 「…えぇ、結構湧いてるもんですねえ」
マリン 「仕方ありません。 何枚か撮影もしましたし、以降は私が最前列で戦闘に出ます。」
マリン 「……ふふふっ……」
ルリ 「……うん。それがいいね」
紅覇 「異変が起きてる可能性があるならば調査するべきかもしれないなあ…」
シャムシール 「oO(……随分、嬉しそうだな…)」
マリン 「さぁ、行きましょう!」
紅覇 「あ、ああ…」
シャムシール 「あぁ、はい!、援護しますよー。」
マリン 「あははっ!」
紅覇 「……?」
シャムシール 「oO(様子が…)」
ルリ 「……」
ルリ 「oO(あのマリン……じゃ、ない、のかな)」
ルリ 「oO(……楽しそうなら、いっか)」

不敵に笑うマリンを先頭として、一同は襲撃してくるダーカーを蹴散らし、回収ポイントへ急ぐ。
しかし、明らかに戦闘が本格的になるにつれ、マリンの笑みは深くなっている。
それを訝しむ3人の視線に気付き、彼女は歩を止めた。


マリン 「…皆さん、どうかしましたか?」
紅覇 「いや、ペースが早いなと思ってな…」
ルリ 「うん。いきいきしてる」
マリン 「い、いきいき…? 敵の攻撃が激しいというのに、そんなことは……」
マリン 「oO(……気をつけないと……)

露骨に動揺する彼女は、自らの指で口元に触れ、自らの表情を確かめると深呼吸し無表情を作る。
すると同時に、シャムシールが何かを感じ取ったのか周囲に視線を向けた。
辺りを見回すと、注意深く探る。

シャムシール 「…?」
紅覇 「どうした?」
マリン 「…あ、シャムシールさん? どうかしましたか?」
シャムシール 「え?…いえ、なんでもないですよ。敵が多いですからねー、ちょっと注意でもしとこうかと」
シャムシール 「oO(…誰か見てるな。…よく訓練されてるもんだ…)」
マリン 「……それなら、良いのですが。」
紅覇 「……。」
マリン 「……回収ポイントはまだ奥です。 警戒を解かず、このまま進行しましょう。」
紅覇 「了解した。」
ルリ 「ん、うん」
シャムシール 「はあーい!」
シャムシール 「マリンさん!慎重にいきましょう!」
マリン 「え…… は、はい…? 了解しました。」

先頭を行くマリンにシャムシールが注意を呼びかけ。
警戒しつつ、4人は目的地に辿り着く。

マリン 「…回収ポイントはこの先ですね。 ですが…」
ルリ 「……うん」
紅覇 「なにか問題でもあるのか?」
マリン 「……大型の反応。 皆さん、気をつけて。」
紅覇 「了解。」
シャムシール 「…はい。りょーかいです。」
ルリ 「わかった。……援護は、任せてくださいっ」

空間が赤く歪み、地に立つ大型ダーカー。
識別名「ゼッシュレイダ」が、4人を見下ろす。

シャムシール 「随分でかいですねー!」
ルリ 「ほんと、にっ」


クレハの正確な狙撃、ルリのテクニックを駆使した援護。 それらを受けマリンとシャムシールが切り込む。
噛み合った連携が光り、これといった被害もなくゼッシュレイダの巨体は崩れ、動きを止めた。
マリンはそれを確認すると、再び自らの指で自分の表情を確認する。


紅覇 「怪我はないか?」
マリン 「……ええ、問題ありません。 皆さんも大丈夫ですか?」
ルリ 「うん、大丈夫」
シャムシール 「…えぇ、こちらは大丈夫です。」
紅覇 「マリンとシャムシールが引きつけてくれたお陰で安全に狙撃することが出来たな…。ありがたい。」
紅覇 「ルリの援護も助かった。」
マリン 「あはは、クレハさんの狙撃こそ的確で……」
紅覇 「どうかしたか?」
マリン 「……シャムシールさん。 何かあるのですか? どうも、何か… この場のダーカー以外に警戒しているように見えますが……」
ルリ 「えへへ……、……」
ルリ 「……うぅん? ……何かいます?」

戦闘が終わってからもひたすら周囲を警戒していたシャムシールに、3人が問いかける。
彼は少し躊躇しながらも、静かに口を開いた。

シャムシール 「……。 …視線を感じました。あと、甘い匂いも。…勘違いだったのかも、しれませんが。」
ルリ 「……視線?」
マリン 「……甘い匂い?」
紅覇 「よく分からんな…。」
シャムシール 「…えぇ、ですけど。無事ここまで来れましたし。きっと俺の勘違いですよ。すみません、妙なこと言って」
シャムシール 「oO(…素直に喋ることなかったかもだが、こっちの仕事に支障が出るよりましか…)」
マリン 「ふむ…… 少し、気になりますね……」
紅覇 「……気配に敏い方では無いからな…俺はよく分からない。」
ルリ 「ふふ。……一応、辺りを哨戒してみましょうか?」
ルリ 「変なものだったら、嫌だし」
シャムシール 「えぇ、そうですね…。」
マリン 「……それが良いかもしれません。 一旦、シップに戻ってカメラを置かせてください… それから補給も。」
ルリ 「ふふ、うん。せっかく撮れたのに、壊れたら嫌だしね」
紅覇 「ああ。」
ルリ 「……さっきみたいに、いっぱいダーカーがいたら、大変」
マリン 「ええ。 準備は念入りにしておきましょう。」

もう一度軽く辺りを見回してから、一同はキャンプシップに戻り。
準備を済ませると、再び降下して探索を始めるのだった。


マリン 「…シャムシールさん、何か感じますか?」
シャムシール 「ん、いえ…。視線を感じたのは、もっと向こうですね…。」
マリン 「そうですか…… ではそちらの方角に……」
紅覇 「何があるか分からない。警戒していこう。」
ルリ 「はいっ」

各自が周囲に気を配り、注意しつつ歩いて行く。
が、その時、最後尾を歩いていたマリンの背後の空間が赤く歪む。
先程討伐したはずのゼッシュレイダだった。

紅覇 「マリン、後ろ…!」
マリン 「…な…!」
ルリ 「……ッ!?」
シャムシール 「…!」

それぞれ戦闘態勢をとると同時に、ゼッシュレイダは甲羅に閉じこもり、回転を開始。
背中から紅弾を撒き散らし、そのそれぞれが4人を襲う。
普通であれば、十分避けられる攻撃であるが――――

マリン 「この程度…! ………!」

敵を前にしながら、彼女は気付いてしまった。 自分がはっきり笑みを浮かべていることに。
はっとして、紅弾を前にしながらその動きが止まる。

紅覇 「っ……これではマリンの援護にいけないな……!」
ルリ 「……マリン!!」
シャムシール 「マリンさん!」
マリン 「しまっ―――」

3人は自らを狙う紅弾を避けるのに手一杯で、マリンのフォローに向かうことはできない。
悲痛な叫びが木霊し、紅弾はマリンを直撃する――――

―――かに、思われた。

一陣の風が吹く。 ふわりと足元の花たちを舞い散らせ、紅弾を引き裂いた影が、マリンの前に降り立つ。

クロエ 「……御免遊ばせ。」

独特な形状の刺突剣のようなカタナを素早く抜き、払い。 疾風の如き動きで、「それ」は大型ダーカーの頭部、急所を刺し貫いた。
地響きと共に倒れ伏した巨体は、赤黒い塵となって消滅する。

ルリ 「……あ……」
マリン 「………」
紅覇 「ん……」
シャムシール 「……。oO(…こいつは…)」
クロエ 「……」
マリン 「あ…… え、えぇと……」
ルリ 「マリン……っ (側に降り立ちながら、目の前に立つ人物を見上げてはっと息を飲み押し黙る)」

膝をつき呆然と目の前に現れた人物を見上げるマリンの元に、ルリが駆けつける。
だがその人物の顔を見ると、はっと息を飲み押し黙った。

当の本人は無表情を一転させ、マリンを見下ろすまま完璧な笑顔で口を開く。

クロエ 「……大丈夫? 怪我はないかしら?」
マリン 「…申し訳ありません、助かりました。 …ありがとうございます。」
マリン 「……ルリ?」
ルリ 「あ、ううん。……前に……会ったことが」
ルリ 「……クロエさん、ですよね」
クロエ 「そう、よかった。……皆さんも、無事のようね。 ……ルリさんも」
クロエ 「ふふ……お久しぶり」
マリン 「ルリのお知り合い…? クロエさん、ですか。」
ルリ 「お久し振りです。……あんまり、綺麗な太刀裁きだったから……目を疑ってしまいました」
クロエ 「ふふ、ありがとう。褒めていただけて嬉しいわ。」

クロエ、というらしい少女を含め、話し込み始めた女性3人に対し、男性陣は少し離れた場所でその様子を見守っていた。
特に、シャムシールは普段の穏やかな様子とは異なる、油断のない目つきでクロエを見つめている。
それに気付いたクレハが小声で尋ねた。

シャムシール 「……。」
紅覇 「どうか、したか…?」
シャムシール 「…え? …あぁ。もしかしたら、ずっと見守っててくれたのかと思いましてね…。」

依然気を抜かず観察を続けるシャムシールだが、自己紹介が続いていた。


マリン 「あちらの紅い髪の男性が、クレハさん。 隣の小さめの(小声)男性はシャムシールさんです。」
紅覇 「ん、ああ……助かった。礼を言う。」
シャムシール 「…マリンさん、聞こえてますよー。」
クロエ 「……いいえ、「同業者」ですもの、手助けは当然ですよ。…クレハ、さん」
紅覇 「咄嗟の事で反応できなかったからな。貴方が居なければマリンは危なかったかもしれない。重ねて礼を言わせてくれ。」

くす、と彼女は笑って。 その「マリン」に目を向ける。

マリン 「――私は、マリン・ブルーライン。 助太刀、ありがとうございました。」
クロエ 「……マリン、ブルーライン……」
クロエ 「……そう。…素敵なお名前ね。助けてあげられてよかったわ……ふふふ」
マリン 「……? ありがとうございます。 ……先程の剣術、あるシップ特有のものに似ているように見えましたが……」

マリンが以前家族と共に暮らしていた、とあるアークスシップ。
その中でも一部の者が習得している剣技に、目の前のクロエが使っていたそれは類似していた。
振るうことはできないが、彼女も見たことはある。

クロエ 「……、……そうね、わたしは従者ですから。上流の方々の住んでいる艦の者ですわ」
マリン 「…やはり、そうですか…… ……?」
ルリ 「……そういえば、クロエさんはどこかにお仕えしてる方なんですよね。今日は、……?」

肯定、ととれる発言。 と同時に、背後の人の気配があった。
威厳のある、独特の雰囲気を持つ金髪の男性。 それを見たクロエは、はっと微笑みを消して男性の傍に駆け寄る。

クロエ 「……!」
マクベス 「・・・クロエ。」
紅覇 「……。」
マクベス 「・・・随分と、時間がかかっているようだが?」
クロエ 「はっ……申し訳ありません、予想外のことがありました。わたしの不足でございます」
クロエ 「どうか、お許しを…」
マリン 「oO(この人が、主人?)」

その様子を4人は暫く眺めていたが、やがてルリが口を開く。

ルリ 「あの、違うんです。クロエさんには、助けていただいて」
マクベス 「・・・・・・」
紅覇 「――危ないところを彼女に助けられた。」
シャムシール 「…とはいえ、随分タイミングが良かったように思いますが。…クロエさん?」

その問いに、クロエはにこりと愛想の良い笑みを返すだけで何も答えない。

マクベス 「・・・ふむ」
ルリ 「……あの、なので……不足なんて、とんでもないです。……ね」
マリン 「ええ、私を救っていただいて…」
マクベス 「・・・態々何事かと思えば・・・・・・まあ、いい。気は済んだのか、クロエ」
クロエ 「…はい。勝手な真似をし、主に時間を取らせてしまいました、申し訳ありません」
マクベス 「後は何か、用事がある訳でもあるまい」
クロエ 「はい。すぐに仕事を片付け、帰って紅茶をお淹れしますわ。屑石払いは猫にお任せを」

主従と思われる二人の会話に割ってはいるように、マリンが口を挟む。

マリン 「……あの。 もし良ければ、お名前を聞かせていただけませんか?」
マクベス 「・・・・私の名など聞いて、意味がおありかな?お嬢さん」
マリン 「…先程のクロエさんの動きからも、相当な方だとお見受けします。 私のほうも何か恩を返せることがあるかもしれませんし…」
マリン 「oO(……それに……)」
マクベス 「・・・まあ、艦の外ではあまり意味を成さぬ名だ。勿体ぶる事もないか・・・」

マクベス 「・・・私は、マクベス。マクベス・ジェラルド・・・・・・」

マクベス 「・・・マクベス・ジェラルド・ディヴェローナ。」

その名を口にすると同時に、ルリとマリンが大きく目を見開いた。
ディヴェローナ。 その家名が意味するところは……

ルリ 「…………え?」
マリン 「ディヴェローナ……!」
マクベス 「・・・これで満足かな?」
シャムシール 「……。」
紅覇 「……?」
マクベス 「・・・さて、クロエ。」
クロエ 「はっ…」
マクベス 「我々も先へ進むとしよう」
クロエ 「…かしこまりました。では…」
マリン 「……お待ちください。」

ルリの眼差しが殺意に重くなるのは一瞬。 それを一瞥したマリンは、再びマクベスを見据えて引き止める。
警戒の篭った、真剣な目。それに振り向く主従。

マクベス 「・・・まだ何か、ご用かな」
マリン 「……この艦に、訪れた目的は……」
ルリ 「……」
マクベス 「・・・わが身を鍛え直すために。 他意は無い。」
マリン 「……そうですか。 あなたの、「弟」には…… 不干渉、ということですね?」

彼が名乗った名は、彼女達のチームメイトとの関係をそのまま表している。
もし危害を加えるつもりなら、それを見過ごすつもりはできない。

マクベス 「放っておいても野垂れ死にそうな者に、態々手を下すまいよ・・・・・・私もそこまで時間に猶予がある訳ではない。」
ルリ 「…野垂れ死になんてしない! 立派にやってる!」

むっと眉を寄せ、ルリが叫んだ。 訝しげに、僅かに眉を上げマクベスがそちらを見る。

マクベス 「・・・?」
ルリ 「少なくとも、そちらにいた頃よりは、ずっと」
マリン 「る、ルリ……」
紅覇 「……。」
マクベス 「・・・なるほど、なるほど」
クロエ 「……主。木っ端の…」
マクベス 「ああ・・・・・・おかしな縁もあったものだ」

クロエが小さな声で報告し、それにマクベスが微かに愉快そうに肩を揺らす。
叫んだルリはふんと鼻を鳴らし、腕を組んでいる。

マクベス 「・・・言っておくが、愚弟には何の感慨も無い」
マクベス 「・・・・・・今、何処でどのような暮らしをしていようと、興味も湧かん」
マリン 「…情報、ありがとうございました。 貴重なお時間をとらせてしまい、申し訳ありません。」

小声であと一つ聞きたいことがあるのですが…と付け足すが、これ以上聞きだせることは無いと判断したのだろう。
ルリはその丁寧な様子にむくれながらも、シャムシールが口を挟む。

シャムシール 「…俺からも、ちょっとお尋ねしたいんですが。そちらの美人は、なぜ盗み見みたいな真似を?」
シャムシール 「…駄犬なもんで。嗅ぎつけたものの理由は知りたくなるんです。差支えなければ、ぜひ。」
マクベス 「・・・・・・」
クロエ 「………盗み見?そんな下世話はしていませんよ。ふふ…」
クロエ 「……わたしは、ただ、近くを通った同業者と、たまたま同じ道の先に用があり、たまたま危険に気づいて助太刀しただけ、です」
クロエ 「……何か、反証でもおありかしら。お聞きしますわ?」
マクベス 「・・・我々も任務中だ・・・そういうことだ」
シャムシール 「いーえ、とんでもないです。じゃあ、マリンさんは随分な幸運に恵まれた訳ですね。いや、失礼しました。」

にこやかな笑顔同士がぶつかり合う。その下にあるものを探ろうとするのは無謀だろう。
おろおろと2人を眺めていたマリンが口を開く。

マリン 「……シャムシールさん…… ……ひとまずこちらも退きましょう、皆さん。 クロエさん、本当にありがとうございました。」
クロエ 「うふふ…。…では、我が主人は多忙な方ゆえ、そろそろ失礼させていただきます。主、よろしいですか?」
マクベス 「・・・問題が無ければ、任務に戻りたいところだがな?」
シャムシール 「えぇ、そうですね。…俺は問題ないです。」
紅覇 「……助けられた事は事実だからな。もう一度礼を言おう。」
ルリ 「……ですね。……ありがとうございました、クロエさん」
シャムシール 「妙なこと聞いて悪かったです。…ありがとうございました。」

マリン 「ではお2人とも、お気をつけて。 …それでは。」

マクベス 「・・・セラフィナの娘。」
マリン 「……えっ!?」

踵を反したマリンだが、予想外の人物に、予想外な呼び方で引き止められ慌てて振り向く。
いや、正確には予想外ではない。 この人物は知っているはずだった。 セラフィナ――自分の母を。
先程はその行方を聞きたかったのであるが…… まさか相手から、そもそも自分がその娘であることを知っているとは。
マクベスの気まぐれとも言うべき言葉に、従者であるクロエはほんの少し困った顔をするが、やはり黙って従う。

ルリ 「……セラフィナ……」
マクベス 「・・・君の母上は、幾らか印象深い。」
マクベス 「・・・それだけだ。」
マリン 「……母に手を上げたのは、兄だ…と、ロミオくんから聞いていますが。」
クロエ 「それは我が主ではありませんわ」
マリン 「…………」
ルリ 「……、……」

鋭い眼差しと共に、明確な敵意を込めた質問。 それを素早く否定したのはマクベスではなくクロエだった。
答えを聞き、ルリとマリンの表情が少し柔らかくなる。
ディヴェローナが3人兄弟であることは知っている。問題の相手は残りの1人、ということだろう。

マクベス 「・・・ジュリアスの事だろう。奴はロミオの世話係である彼女を嫌っていたようだしな」
マリン 「……母の行方は、ご存知ではないのですか?」
マクベス 「・・・知らんな、残念ながら」
マリン 「……そう、でしたか。 貴重な情報、感謝します。」
マリン 「……行きましょう、皆さん。」
マクベス 「・・・構わん。行くぞ、クロエ」
クロエ 「……………はい。」
ルリ 「…………」
シャムシール 「……。oO(…どういう繋がりか…調べてみるのもいいかもしれない…)」
シャムシール 「……はあーい。」

今度こそ踵を返し、一同はキャンプシップに戻る。
決して明るくはない雰囲気の中、不機嫌そうに膝を抱えて上下に揺れていたルリが口を開く。

ルリ 「……良かったの、マリン」
マリン 「…私は、大丈夫ですよ。 ルリこそ、よく耐えてくれました。」
マリン 「それより皆さん、申し訳ありません。 大した任務ではないはずが、こんなことになってしまって……」
紅覇 「いや……それより怪我はないか?」
マリン 「ええ、問題はありません。 クレハさんとシャムシールさんにも… そのうち、事情をお話することになるかもしれません。」
シャムシール 「いいえ…。こっちは問題ありませんし…、それよりもご自分をいたわってくださいね。」
紅覇 「ああ、まあ……もし話しにくいことならば気にしないでくれ。」
紅覇 「全員無事に戻れたようで何よりだ。」
マリン 「…すみません。 そう言って頂けるとこちらも助かります。」

しんみりしてしまった空気に、無理に口角を上げるように話題を変える。

マリン 「…でも、写真はちゃんと撮ってありますから。 今後チームの広報などに利用されても、文句を言わないでくださいね?」
ルリ 「……それは……。……うん」
マリン 「結構、恥ずかしくなるような写真もありますよ? ふふ、資料になるのが楽しみですね。」
シャムシール 「えっ。それはー…あー、クレハさんの写真を使うといいと思いますよっ。イケメン高身長!」
紅覇 「え…?」
紅覇 「いや、広報なら親しみやすい方が良いだろう。俺では威圧を与えるだけだと思うぞ」
ルリ 「oO(っていうか恥ずかしくなるようなって何だ……!!)」
マリン 「華やかな絵は十分向いていると思いますが……」

マリン 「ふふ… とりあえず、この場で解散にしましょう。 皆さん、お疲れ様でした。」
マリン 「改めて、ご協力に感謝します。 …ゆっくり、休んでくださいね。」
紅覇 「ああ、お疲れ様だ……。――マリンこそ今日はゆっくり休むといい。」
シャムシール 「ですねー。…えぇ、了解です。お疲れさまでした。」
ルリ 「……うん。お疲れ様」

3人に別れを告げ、一番先に帰還する。


「(……抑えきれなく、なってるのかもしれない)」

歩きながら、自分の頬や口元を手のひらで触れて確認する。
醜く笑みを浮かべていないか? 無表情を保てているか?

「(…気をつけないと。 ……それに、あのクロエさん、という女性……)」

次は片手を握ったり、開いたりして。
軽い深呼吸をして、余計な思いを振り払った。


To Be Continued...


  • 最終更新:2015-02-24 22:55:59

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