Nobility Stranger A

通信の接続音とともに、チーム回線に女性の声が流れる。

マリン 「えぇと…… 皆さん、聞こえますか?」
ルリ 「……ん、マリン。聞こえるよ」
紅覇 「……ん?」
シャムシール 「聞こえてますよー。」

応答したのは3名。 確認すると、マリンは歯切れ悪く続ける。

マリン 「お三方とも…… 良かった。えぇと… 実は、その。言い難いことなのですが…」
ルリ 「……?」
紅覇 「どうかしたのか?」
マリン 「…すみません。 とにかく、任務を受け取っているので… 指定の場所まで来ていただけませんか?」
シャムシール 「…え?えぇ、了解しました。」
ルリ 「……ん、分かった。すぐ行くね」
紅覇 「了解した。」


集合場所はショップエリアの巨大モニュメント前。
現在はバレンタインデーをイメージした装飾が為されている。


ルリ 「お疲れ様。……ふふ、今日は髪、下ろしてるんだ。可愛い」
マリン 「…えっ! そ、そんなことは…」
紅覇 「……すごいモニュメントだな。」
シャムシール 「シャムシール、参りました」
ルリ 「シャムシールさん。クレハさんも」
マリン 「…うぅ、えぇと… お集まり頂いて、ありがとうございます。」
ルリ 「ふふ。ううん……どうかしたの?」
マリン 「それで、今回の任務なのですが…」

どうも煮え切らないマリンの態度に3人が訝しげに思っていると、彼女は持ち物から1つのカメラを取り出す。

紅覇 「カメラ……?」
シャムシール 「…?」
マリン 「…えぇと。 リーダーからの指示… お願い? 気まぐれ? で、チームやメンバーの資料を作ることになりました。」
マリン 「それで、写真しゅ… …メンバーの画像がいくつか欲しいということで。 今日は、その…」
マリン 「……皆さんを撮影させて頂きます。」
ルリ 「……」
紅覇 「は?」

言葉の意味が理解できない、とった様子の一同。

シャムシール 「撮影、ですか。…今からですか?」
マリン 「……そうなります。「折角麗しい容姿が揃ってるんだから」 とのことです。」
ルリ 「……また変なこと頼むなぁ……」
シャムシール 「っていうか今写真集とか言いかけたんじゃ…。」
紅覇 「理解に苦しむな」
マリン 「活動のアピール、知名度の向上…といったところでしょうか。 狙いはよくわかりませんが…」
ルリ 「……うぅ。そんな理由……」
マリン 「…とにかく、どうしても嫌、という方については強制はしません。 しかし、可能な限り写真は多いほうが良いので…」
紅覇 「広報活動の一環…か?」
マリン 「そう考えるのが自然ですね…  どうでしょうか? 皆さん、受けていただけますか?」
シャムシール 「…あ、じゃあ俺カメラマンしますよー。こういうのは美男美女のがいいでしょう。」
マリン 「いえ、いけません。 頼まれたのは私ですから。」

柔和に微笑むシャムシール。 が、唐突にきっぱりした態度でそれを断る。

ルリ 「……うー。マリンが頼まれたことなら……。……こんなの撮っても、仕方ないと思うけど」
マリン 「そんなものは瑣末なことですよ。 貴女が見せたくないというのなら、勿論撮りませんが…」
紅覇 「しかし、広報ならマリンを撮ったほうが…」
マリン 「とにかく! 撮影班は私ですから!」

顔の火傷に手で触れ気にするルリと、クレハの提案をまたもきっぱり断るマリン。
いつもとの態度の差に、3人も戸惑い気味になる。


紅覇 「こういうものなら妹の方が向いてそうだなあ…」
マリン 「…クレハさんも、写りたくないのであれば… 辞退していただいても、アサヒさんを呼んで代わっていただいても。」
紅覇 「…いや、何れ全員分を求められる可能性もあるし、何より今マリンの手をわずらわせるのも申し訳無いな。」

ルリ 「むぅ…… ……というわけで、シャムシールさんはモデルさんですね」
シャムシール 「えっ。いや、俺はそういうの向いてないですよ。そっちのおにーさんの方が、背も高いですし…女性受けはいいと思いますよ。」
マリン 「…あれ? お2人は初対面でしたか?」
ルリ 「……そういえば……」
紅覇 「……すまない。挨拶が遅れたな。」
シャムシール 「あぁ、いや。こちらこそ遅くなりまして。新しく入ったシャムシールって者です。どうぞ宜しく」
紅覇 「ああ、クレハという。こちらこそ宜しくだ。」

にこやかに挨拶を交わす2人と、それを微笑ましく眺めるルリとマリン。
承諾はとれたと判断したマリンは、普段からは想像がつかない強引さでシャムシールの背中を押し、モニュメントを背に立たせる。

マリン 「ふふ、では親睦を深める意味でもお願いしましょう。 さあ、ではあれこれ言うシャムシールさんからモデルになりましょうか。」
シャムシール 「えっ!?えぇー…、まぁ、マリンさんからのお願いですもんねぇ…。」
紅覇 「oO(あれが背景なのか…?)」
ルリ 「oO(マリン、やる気だなー)」
シャムシール 「oO(…クマがバック…)」

成人男性に似つかわしくない背景に、一同思うことがあるようである。

シャムシール 「普通に立ってたらいいんですか…?」
マリン 「ふふ、素直なのは良いことです。 では、何かポーズをお願いしましょうか? 」
シャムシール 「ま、まってください。…あんまり無茶ブリは、ダメですよ?」

何かのスイッチが入ってしまったらしく生き生きとカメラを構えるマリンと、冷や汗を浮かべ困惑するシャムシール。
その様子を見ていたルリとクレハが小声で話し合う。

ルリ 「……最初がいると、心構えが出来ていいですね」
紅覇 「心構えもできるが恐怖も増していくな…」
ルリ 「……それは……、……うーん」

マリン 「写真を撮るのにただ立っているだけなんて芸がないではありませんか。 さぁ、あとの2人の分もありますし早く!」
シャムシール 「oO(ノリノリだぁ…!)えーっと、えっと…っ。」
シャムシール 「じゃあこれで!やるならとことんです!」

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シャムシール 「…ってことで、もう勘弁してもらえますか。」
マリン 「…ふふふっ、良い感じです。」
シャムシール 「……あぁああー…!!!」

所謂「投げキッス」のポーズを選んだようだ。 中性的で整った顔立ちの彼ならではだろう。
が、当の本人は耳まで顔を真っ赤にしたまま、物陰に隠れうずくまってしまった。
対照的に撮影したマリンは満足そうに笑っている。

ルリ 「あー、あー……」
マリン 「まぁ、2枚目3枚目はのちのお楽しみにしておきましょうか…」
ルリ 「だい、じょうぶです、可愛かったですよ!」
シャムシール 「かわいかったって…」
紅覇 「しかしこんな生き生きと…」

ルリの一言で一層落ち込むシャムシール。 更に、ぎらりとした目でマリンが残りの2人を振り返る。

マリン 「さぁ、次はどちらです?」
シャムシール 「oO(紅覇さん…あとは任せました…!)」
紅覇 「…?!」

ルリは素早くクレハの背に隠れてしまった。 全員の視線がクレハに集まる。

紅覇 「……わかった。」
マリン 「あら、クレハさんですね。 では、同じ場所に……」
ルリ 「えへ……」
シャムシール 「クレハさん……ファイトー…」
マリン 「さぁ、何かポーズをお願いしますね?」
紅覇 「ポーズ…」

微笑むルリとうずくまるシャムシールに見送られ、モニュメントを気にしながらもクレハが立つ。
ラフな立ちポーズだが、スタイルの良さと端整な顔立ちが際立っている。

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ルリ 「……何でだろう。普通にモデルさんみたいだ……」
シャムシール 「イケメンってすごいですね…。立ってるだけで絵になる…。」
ルリ 「……」
マリン 「ふふ、素晴らしいです。 良い写真が撮れました。」
ルリ 「大丈夫! シャムシールさんは、可愛い担当なので!」
シャムシール 「!!?」
紅覇 「じゃあ次はルリだな。」
ルリ 「うぐっ」
シャムシール 「……。…はっ。そうですよ!次はルリさんですっ。」
ルリ 「……」
ルリ 「…………ぇ、と……」
ルリ 「……これじゃだめかな……」

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彼女はずるずるとモニュメントに向かうと、思いついたようにクマの手をとり、抱きかかえ火傷を隠して、ちらりとカメラに視線を向ける。
少女らしい、とても愛らしい姿がカメラに収められる。

マリン 「ふふ、その短めのカットとリボン、とってもお似合いですよ。 素晴らしいです…」
ルリ 「……はずかしい……」
シャムシール 「あーやっぱり女性とクマのぬいぐるみは似合いますねぇ…。」
紅覇 「男があれを背負っても冗談にしかならないよな…」
シャムシール 「…もう既に遅いですよ、クレハさん…。」
紅覇 「…何かを失った気がする。」
マリン 「ふふ、とても良いものが撮れました。 ロミオくんに没収される可能性を考えてバックアップをとっておきましょう…」
ルリ 「えっ没収?」
マリン 「いえ、なんでも。 それより皆さん、まだ終わりではありませんよ?」
ルリ 「ぅえっ?」
シャムシール 「えっ!?」
紅覇 「えっ」

満面の笑みを浮かべるマリンに対して、3人が明らかの焦りの声を発する。

マリン 「探索中、戦闘中の写真も頼まれているんです。 アークスの本分といえば、やはりそちらですから。」
マリン 「まぁ、水着姿、コスプレなどの注文も来ていますが… それはまたの機会にとっておきましょう…」
ルリ 「えっ……えっ?」
紅覇 「……。」
シャムシール 「コスプ!?…今のは、聞かなかったことにします…。」
マリン 「実は、もう既にキャンプシップをとってあるんです。 さあ、行きましょう皆さん!」
シャムシール 「えぇーっ!準備万端すぎやないですか…っ。あっ、ちょっと待って…っ!」
紅覇 「なんであんなに生き生きしてるんだ?」
マリン 「何をこそこそ話し合ってるんですか? おいていっちゃいますよ?」
ルリ 「……もー……ふふ」
シャムシール 「あ、あぁ…はーい。」

有無を言わさぬ勢いでゲートエリアに歩いていくマリンに、3人も続く。
キャンプシップの行き先は、ナベリウス遺跡エリアだった。



ルリ 「……よし、と 」
マリン 「さて、あまり敵が多くないと思われる場所を選びましたが… 油断だけはしないでくださいね。」
ルリ 「ん、うん」
マリン 「私は、撮影役として後方に徹するつもりですが…」
マリン 「想定外のことがあれば、勿論撮影を放棄して戦闘に回ります。 それでは… 降下しましょうか。」
シャムシール 「はは、了解でーす。」
紅覇 「あ、ああ…」

戦闘着に着替え、準備を終えた一同は、一斉に降下する。



  • 最終更新:2015-02-24 22:50:13

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