B.T.F/01

惑星リリーパにて、チーム総出での採掘基地防衛戦。
ロミオの所属した班も無事任務を終え、キャンプシップへ戻る。


ロウフル   「てことでー、みんなお疲れさんだぜ」
ロミオ    「・・・ん・・・あぁ、お疲れさん」
ルリ     「お疲れ様でした……ふぅ」
ベルゼバルト 「あいよ…お疲れさんっ」


和やかな雰囲気。しかし各々が、ロミオに訝しげな視線を向けていた。


ロウフル    。O(しっかし・・・ロミオは大丈夫なのかねぇ、なんでまたフォトンブラスト発動したとき、あんなに苦しそうなのかねぇ)


任務中、ロミオがフォトンブラストを発動させる際に苦しげに呻くのをロウフルは見た。
その様子に言い知れぬ不安を感じる。
己自身の不安の種―――ダーカー関連の事柄へ触れた時のような。


ロミオ    「・・・少しは、気も晴れた・・・かな」
ロウフル   「鬱憤はしっかり晴らせたか、よかったよかった」
ベルゼバルト 「まっデカイ戦いだからなァ、そりゃスカッとした気分にもなるかっ」
ロウフル   「たしかにな~」
ロミオ    「・・・ああ」
ルリ     「……やれやれです、もう」


ロミオ    「・・・・・・」
ベルゼバルト 「…どうしたい?」
ロミオ    「・・・(呆けた様子で立ち尽くしている」
ルリ     「…………ロミオ?」
ロウフル   「ん?どした~?ロミオ」
ロミオ    「・・・・・・う、あ?・・・・・・あ、ごめん」
ルリ     「……?」


ぼうっと立ち竦むロミオの傍に駆け寄り、ルリは先ほどの様子を重ねる。


ルリ      。o(……何が。 「何」が、溢れるんだろう……)


・・・「溢れる」と。苦鳴混じりに、しかし確かにロミオはそう呟いた。
やはり脳裏に浮かぶのは、だいぶ前に聞かされた「D因子」関連の話。
気にかけてはいたものの暫く見て見ぬ振りをしていた自身の心に、うっすらと不安と悔いが去来する。


ベルゼバルト 「緊張が解けて呆けたか」
ロウフル   「ハハハ、かもな~」
ルリ     「…………」
ロミオ    「・・・ん、それ・・・それだ」
ロウフル   「でもって、なかなかお熱いな~、うん」
ロウフル   「コホン」
ベルゼバルト 「お前、そういうのよくあるよなァ」
ルリ     「……」
ロミオ    「・・・ん、悪い・・・」
ロウフル   「・・・え?結構ぼーっとしたりするっけ?」
ベルゼバルト 「任務が終わった後だからいいけど」
ルリ     「…… (溜め息) 結構、あるかもしれませんね。……さあ、帰りましょうか」
ロミオ    「・・・・・・ん、帰ろう」
ロウフル   「ふむ・・・まぁ任務後だったら問題ないか」


皆、ロミオの何かしらの変容には気づいている。
だからこそそれには触れず、普段通りに茶化しからかう事が、彼のためになると考え。


ロウフル   「んじゃ、撤収すっか!」
ベルゼバルト 「そうだな……あぁ、最後に、ロミオ」
ロミオ    「・・・ん」
ベルゼバルト 「仕事は仕事、休む時は休むっ。オンオフはちゃんと切り替えろよ?」
ベルゼバルト 「とにかくこの後は何も考えず休んどけっ」
ロミオ    「・・・ああ。判ってる・・・ありがとう」
ベルゼバルト 「ん、わかってるならいいんだっ。そんだけっ」


ベルゼバルトの何気ない忠告。
ロミオにはそれが遠回しの心遣いに思えた。


ロミオ    「・・・悪いな、皆」
ルリ     「…………ふふ……無理だけは、しないでね」
ベルゼバルト 「なーに、気にすんなって」
ルリ     「……ああそうだ、ロウフルさん」
ロウフル   「ん?どした?」
ルリ     「……あとでぐっさりいきますからね」
ロウフル   「・・・・・・」
ロウフル   「サラバッ!」
ルリ     「こら!」
ベルゼバルト 「お前またやらかしたの…?」
ロミオ    「・・・やれやれ」
ベルゼバルト 「 ハハハッ 行こうぜェ」
ロウフル   「な、なんもしてないぜ~、ただ仲睦まじいのみてニヤニヤしてただけなんだぜぇ~」
ルリ     「くっ、逃げ足の速い……!」
ルリ     「ロウフルさんっ!」
ロウフル   「・・・ハイ」
ロミオ    「・・・はは」


いつもの光景だ。
近いような、遠いような、いつもの光景。


ルリ     「凍土でブーメランにしてぐっさりしますよ!!」
ロウフル   「フルコースじゃねぇかっ、んなの勘弁だぜ!?」
ルリ     「変なことばっかり言うからでしょう!」
ベルゼバルト 「今度会ったら倍刺しとけよっ」
ロウフル   「そ、そんな~」
ルリ     「まったく……! ベルゼバルトさんのいうとおり、あとで倍にしますからね」
ロウフル   「く・・・恨むぜベルゼ~」
ベルゼバルト 「 身から出た錆だろォ? お門違いだぜェ?」
ルリ     「恨むのはまず自分の口の軽さにする!」
ロウフル   「・・・ハイ」


やりとりに、自然と笑いが零れる。


ロミオ    「・・・ふ、はは・・・。」
ロウフル   「ちくしょう、ロミオー、助けてくれ~」
ロミオ    「・・・ま、気が向いたらな。・・はは」
ロウフル   「気が向いたらかよっ!」
ルリ     「助けなくて良いですよ。一緒にぐっさりしたくないですし」
ロウフル   「ろ、ロミオも巻き添えかよっ」
ルリ     「不当に匿わなければいいんです」
ロミオ    「・・・そうなったら。いっしょにぐっさりされてやるさ」
ルリ     「……痛くしますよ?」
ロミオ    「・・・トモダチだからな、しょうがねえ」


口をついて出た「トモダチ」。
それに驚くとともに、否定されるのではないか、との不安が沸くが―――


ルリ     「何なのその潔さ」
ロウフル   「うおー!ロミオはやっぱいいやつだー!」
ベルゼバルト 「お、これぞユウジョウ!」
ロウフル   「だなっ!」
ルリ     「……まったく。…………ふふ」
ロミオ    「・・・ま、そんな感じで」
ロウフル   「ハッハッハ、まぁ困ったときは頼りにするぜ」
ルリ     「……やれやれ。じゃあ、ユウジョウに免じて。今回は見逃してあげましょうかね」
ルリ     「今回は」
ロミオ    「・・・ん、そうしろ」
ロウフル   「やった!ロミオありがとう!」
ベルゼバルト 「調子のいいやっちゃなァ」
ルリ     「あはははっ」
ロウフル   「ハッハッハ、照れるぜ」
ベルゼバルト 「褒めてねーしっ」
ロミオ    「・・・まぁ、ロウも程々にな・・・・・・やれやれ」
ロウフル   「おう、善処はするんだぜ」


楽しいやり取りの中、徐々に心地良い疲労感がやってくる。


ロミオ    「・・・ま、戻るか・・・」
ルリ     「あ、はい。お疲れ様」
ベルゼバルト 「おう、ゆっくり休めよ」
ロウフル   「俺もお許しが出たし一旦戻るぜ」
ルリ     「言ったからには善処してくださいよ。お疲れ様です」
ロウフル   「てことで、ロミオもゆっくりやすみなよ~」
ロミオ    「ベルゼに言われたとおり、きっちり休むよ」
ベルゼバルト 「オレも戻るか・・・じゃ、またなァ」
ロミオ    「・・・んじゃ、また」
ルリ     「ええ、また」
ロウフル   「おう、またな!」


最後に残ったシップの中、ロミオは先程のやり取りを一人反芻する。


ロミオ    「・・・トモダチ、だってよ」
ロミオ    「・・・はは」
ロミオ     o0(・・・余計な事には、巻き込めねえよな・・・)
ロミオ     o0(・・・良い奴らだ)





グッジョブカウンター「こちらは Romeo Sliver の 部屋です」

部屋に戻ると、すかさずルリから通信が入る。

ルリ     「……お疲れ様。…………本当に、平気?」
ロミオ    「・・・ん・・・大丈夫」
ルリ     「……ほんとう、に?」

ほんの少し、迷い。

ロミオ    「・・・右腕の、傷、から」
ルリ     「…………」
ロミオ    「・・・赤黒い靄が、溢れる」
ルリ     「……、……っぁ、……!!」
ロミオ    「・・・内緒、だ」
ロミオ    「・・・俺にしか見えてないから」

ぽつり、ぽつりと、呟くように。
通信機の向こうから、狼狽するルリの声が聞こえる。

ルリ     「…………っ、そ、れ、……まさ、か、ロミオ……」
ルリ     「………っ、……わか、った」
ルリ     「…………黙って、お、く……。……でも、でももし、何か……何か、あったら。きっと言って」
ロミオ    「・・・ん。判ってる」
ロミオ    「・・心配かけるな。ごめん」
ルリ     「…………ううん。……ううん」
ルリ     「…………ひとりで、抱え込まれたほうが、嫌……」

ルリにだけは、話しておこうと思った。
この右腕の傷に纏わる、自身の知ることを。

  • 最終更新:2014-06-09 21:09:18

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