20170105

マリンが暮らす一室の手前。
ルリがそっと、玄関のインターホンを鳴らす。

ルリ  ……マリン? ……起きてる?

マリン ……あ…… (寝かせていた上半身をぱっと起こし、控えめなボリュームでドアに対し)
マリン ……ルリですか? すみません、今そちらに行きますから……

ルリ  あ、あ。無理しないで……ロックだけ、外してもらえれば……
マリン (ベッドに腰を下ろしたまま、足だけを床につけたところで、傍らの端末を操作すると、電子音と共にドアのロックが外れる)
マリン ……ごめんなさい。 今外しましたから、どうぞ。
ルリ  うん。入るね…… (両手いっぱいに物資を積み上げた姿でドアを潜り。食べ物や飲み物、生活雑貨を机の上に下ろす)

ルリ  ふー……。……具合、どう? つらい?
マリン (ベッドに座ったまま、ガーゼを数箇所に貼った姿を見せ、苦笑に近い表情で微笑み)
マリン ……ありがとうございます、ルリ。 怪我であれば、大したことはありません。 出血も少なく、骨折もありませんでしたから。
ルリ  もう、そうは言うけど…… (あちこちに見える手当ての跡に、顔をしかめて) ……痛くない、わけじゃ、ないんだから……
ルリ  ……こんなに怪我して…… (マリンの手をとると、痛々しげに視線を伏せる)
マリン (倣うように眉を下げ、表情を沈める) ……心配をかけさせてしまいましたね。 私の怪我の方は、本当に大丈夫ですから……
マリン そちらは、気にしないてください。 ……それより…… (瞼を伏せると、何もつけていない自らの首に指で触れ)

マリン ……ごめんなさい。 折角、あなたから譲り受けたものなのに…… ……私、守れませんでした。

ルリ  …… (その指を追うように、首もとを見つめ) ……大丈夫。……リンも、すごく強いから
ルリ  寝てたって、思い通りにはいかない、よ。…………チームシップ内で、交戦になった、って聞いたけど……
マリン ……だと、良いのですが…… (顔を俯け、暫しベッドに視線を落として沈んだ声を発してから、ようやく顔を上げ)
マリン ……はい。 恐らく、あちらの陣営はこちらの作戦を読んだ上で、私を…… いえ、「彼女」を直接狙ったのだと思います。
マリン フレイさん達が拠点を後にしてから、すぐに、あの…… ……スコール、と名乗る男が現れました。

ルリ  …… (剣呑に目を細めると、両手を組み) ……スコール……

マリン ……きっと、何かでこちらの動向を探っていたのでしょう。
ルリ  ……スコールは、すぐ、チョーカーを……リンを、渡せって?
マリン え…… ……えぇと、それは…… (瞳を見開くと、言い辛そうに言葉を濁し、視線を彷徨わせてから)
ルリ  ……?

マリン ………………名を確認次第、すぐに私から挑みましたから…… (ばつが悪そうに、顔を俯けながら小さな声で)

ルリ  ………………
ルリ  ………………ふぐ、っ (噴き出す)

マリン ……わ、笑わないでください! (眉を下げ、気恥ずかしそうに頬を染めながらばっ、と顔を上げる)

ルリ  だって…… (くすくすと軽やかな笑い声をあげながら) ……マリンらしいなあっていうか、うーん、そうじゃなくて
ルリ  そういうマリン、好きだなあって……ほんとは、だめだよって怒らないといけない、だろうけど
ルリ  それはきっと、フレイさんとか、ロミオがやってくれるから……ふふふふ

マリン ぇ、いや、そんな、違うんです、これは……っ、
マリン フレイさんを傷つけたのがあの男って聞いていたから、事情とか、聞く前にどうしても、気持ちが先行してしまって……っ

マリン …………なのに、結果は惨敗でこの通りで…… ……本当に格好悪いですね、私……(声を低く沈ませ、深く溜息を吐く)

ルリ  (にこにこ笑いながら頷いていたが、溜め息を吐いたマリンの背をそっと撫でて) ……そんなに、強かったの?
マリン ……そう、ですね…… (瞳を薄く開き、思い返すように唇に指を当てて)

マリン ……単純な実力で、私は負けていました。 ですが、それ以前に……
マリン (不自然に言葉を切り) ……すみません。 何でもありません…… ……とにかく、一対一で私は敗北しました。

ルリ  ………… (マリンの様子に首を傾げるも、それ以上追求はせず。鼻を鳴らすと腕を組んで)
ルリ  フレイさんも、マリンも、越える実力か……単純に厄介なのに、どこからかこちらを伺われてるとなると……
ルリ  ……セキュリティの強化は、もちろんだし。……しばらく、マリンを一人にはしておけないかも、ね
マリン ……。 ……はい。 今後独断での行動は、控えます。 (ばつの悪そうな顔で顔を下げ)
ルリ  ……そんな顔しないで。マリンが悪いんじゃ、ないんだから……

マリン しかし、私だけでなくルリ達も気をつけてください。 あちらが彼女を狙ってきた以上、目的の全容がまだ読めない……
マリン 私でなくルリ達を狙ってくる可能性も、否定できません。 だから……それは警戒しておくべき、だと思います。
ルリ  ……うん。チームメンバーに関しては……どんなときも、ツーマンセル以上組んだ方が良いかもね
ルリ  ……できれば、普段も……誰かと一緒にいてほしいところなんだけど。……マリン、うちにくる?
マリン えっ? (予想していなかったように声を上げて) ……えぇと、ルリにはもう既にロミオ君がいますし、
マリン ……私がいるとその、邪魔のような……
ルリ  邪魔? (小首を傾げ) ……寝るところなら、作るよ?

ルリ  それとも、フレイさん置いとく?
マリン お、置いとく…… ……って……! (頬がじわじわと朱に染まり、ばっ、と顔を背け)
マリン …………あ、いや、大丈夫です! 怪我が治るまで極力部屋からは出ないようにしますし、何かの用で出る際は、
マリン 可能な限り誰かを呼ぶことにしようかと……
ルリ  そう? ……最初から、近くにいた方が楽だと思うのに……

ルリ  ……あっ。それなら、リヒャルダさんのラボの、空いてるお部屋を貸してもらうとか。そこなら、みんな、すぐ来れるし
ルリ  絶対、誰かいるだろうから……安心だし
マリン ……まぁ、それなら…… …………って!
マリン (何かに思い当たったように) ……だ、ダメです! ラボは、その……!
ルリ  ……??

マリン ……え、えぇ、と…… ですから、あの、……フレイさんがいる、でしょう?

ルリ  安心だね! (力強く頷く)

マリン そ、そういう問題じゃなくて、ですね…… あの……
マリン ……つ、つまり! お、同じ建物の中で寝泊りしたりというのはその、もう、あの、ダメなんです! 無理なんです!
ルリ  ……無理なの?
マリン (顔を俯けて) ……む、無理です……
ルリ  楽しそうなのに、お泊まり…… (ぱちぱちと目を瞬かせ) ……どうして? 人の気配があると、落ち着かない?
マリン ……い、いえ…… そういうわけでは……
マリン (唇に指先を当てつつ、視線を彷徨わせる)……とにかく、フレイさんは…… ダメです……
ルリ  ……? …………、…………

ルリ  ……近くにいるなーって思っちゃうと、つい……顔とか見たくなるよね
マリン だ、だから、そういう余計に意識するようなことを言わないでください……!

ルリ  でもね、マリン (ずい、と顔を寄せて) 本当に、どうしてもの時だと思うから……もっと頼ったって良いと、思うんだ
ルリ  私たちのところだって、受け入れる体制は整えられるし……マリンが近くにいることで、フレイさんも、守れるし
ルリ  ……その先で何か起きたらそれはそれで、とにかく、考えてみたほうが、良いよ
マリン う…… (迫ってきた透いた瞳と目が合ってしまい、目を瞬いて言葉を詰まらせる)

マリン ……わ、かりました…… また何かあって、心配や迷惑をかけるのも本意ではありませんし……
マリン ……ミス・リヒャルダの方にも、掛け合ってみます。
ルリ  うん (こくこく頷き) 私からも、お願いするから……

ルリ  ……それに、あそこなら……スコールや、背後の人も手を出しにくい。……逆に、出方が見れるかもしれないね
マリン ……背後の…… (視線を下げ、少し沈んだ声で)

ルリ  ……大丈夫 (そっと、またマリンの手を取り) ……つらいし、よく、分からないことばっかり、で
ルリ  だから、そういうことも、たくさん話して。……マリンの側にいられて、嬉しいから

マリン …… (重なる手に視線を落としてから、じっと視線を合わせ、ふわりと微笑む) ……ありがとうございます、ルリ。

マリン ……ルリ。 あなたには、隠さず言いますが…… あの日拠点で襲撃を受けた時以来、ふらりと身体が力を失うことがあるんです。

ルリ  ……! (重ねた手に、力がこもる)
マリン 彼らの言う通り、私にはあまり時間が無い……そして、最悪の結末を避けるためには彼女を犠牲にするしかないのかも……
マリン ……だとしても、私は恩人を二度も見捨てられない。 そして、私も死にたくはありません。

マリン 我侭なことを言うようですが…… それでも、あなたは私の選ぶ道についてきてくれますか……?

ルリ  もちろん (マリンの指を、ひんやりとした指先できゅっと握って) ……マリンのわがままなら、叶えてあげたい
ルリ  それに、私も……マリンと、おなじきもち、だから

マリン (繋がった手に、もうひとつの手を重ねて、控えめに微笑む) ……ありがとう。 私の親友……
ルリ  ふふ (柔らかく微笑みを返す。そのとき丁度、夕暮れの時間を告げるベルが、市街地方面から鳴った)
ルリ  ……あ。こんな時間……
マリン ……そうですね。 ありがとうございました、ルリ。 嬉しかったです…… 一人で、退屈でしたから。
ルリ  …………!! (退屈、という言葉に、何かを堪えるような顔をして、したは良いものの我慢できず、マリンに飛び付くよう抱き締める)
ルリ  ……また来るからっ
マリン あっ…… (抱き留められた際に身体が揺れ、瞳を見開いてから、安心したような顔でそっと閉じる)
マリン ……はい。 楽しみにしていますね……
ルリ  うん…… (ぎゅう、と。体温の低い、薄い体でマリンを包み。名残惜しげに離れて、席を立つ)

ルリ  ……あ。差し入れ、冷蔵庫入れておくね。あとで食べて……
マリン ……ありがとうございます。 あまり外にも出れませんでしたから…… 助かります。
ルリ  ふふ。ちゃんと食べて、早く治してね……。……それじゃあ、また
マリン はい。 また来てくださいね……。 ありがとうございました、ルリ。 (ベッドに腰下ろしたまま、小さくひらひらと手を振る)

にこにこと笑顔で手を振ると、ルリはドアに向かって踵を返す。
その一瞬、横顔が、未だ全容を見せない敵を睨んで鋭く尖った。

  • 最終更新:2017-02-20 19:12:33

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード