二番目の上昇A 2

一閃。鞘から抜き身も見せずに振り抜かれた抜剣が、フォトン体を横薙ぎに両断する。

イフェスティオ 「どっちが多く殺れるか勝負な!!!!」
シャムシール  「はは、やってやろうじゃねぇか!全滅にしてやらあ!」

緊張感の薄いイフェスティオの言葉に、シャムシールもに、と犬歯を剥いて笑う。
低く薙ぎ払われる自在槍が、フォトン体の足を払い纏めて転倒させた。

無論、フォトン体側もただ黙って数を減らされるわけではない。
直接刃を交える近接戦闘体を、銃弾や法撃が援護し、二人を襲う。

しかし、イフェスティオはそれを避けない。
それらの攻撃を腕で受けつつ、シャムシールの脇ギリギリを掠める斬撃で敵を引き裂く。

シャムシール  「てめぇ!ノーコンか!」
イフェスティオ 「知らねーな!!死にたく無きゃ避けろよ!!!!」

構う様子も無く、振り向きざまに二体の胴体を十字に薙ぎ払う。
シャムシールも負けてはいない。 駆け抜けた槍の先端が、イフェスティオに気を取られていた何体かを纏めて串刺しにし、横薙ぎに払って周囲ごと跳ね飛ばした。
吹き飛んだ個体がイフェスティオの元にも飛んでくる。

シャムシール  「てめぇもな!」
イフェスティオ 「上等だテメェ!!!覚えてろよ!!!」

決して少なくない数が塵と消えたが、消えた端から次々と現れ、終わりが見えない。
数に物を言わせ、パルチザンを構えた複数体が狭い通路を埋め尽くすようにして、一気に突撃してくる。

イフェスティオ 「くっ、そっ!!ッざけんなよ…!!」

流石に、槍までを腕で受けることはできない。
僅かなスペースを駆使し身を避けるが、小さく掠めた槍が身を裂いた。

シャムシール  「ったく数で落とせると思うなよお!」
メイリーン   『おふたりとも、いいですかにゃ?』

切迫した状況の中、通信が割って入る。
忙しないキーボードのタップ音が、通信越しにも聞こえた。

イフェスティオ 「何がだ猫娘!!!!」
シャムシール  「はぁい!なんでしょう、かっ!」
メイリーン   『大事なお話がありますよぅ。フォトン体の皆さんにどの程度効果があるかはわかりませんけど、』

声に耳を傾けつつも、手を休めている暇は無い。
敵の攻撃を紙一重で避けつつ、最小限の動きで引き裂く中にメイリーンの声が響く。

メイリーン   『今から入口のドアをロックします。まだ庫外にいるやつらを分断しますにゃ。少しでも勢いを減らすために』
メイリーン   『で、当然お二人も修理が終わるまでは出られなくなりますけど、いいですね?』
イフェスティオ 「上等!!!」
シャムシール  「ははっ、そりゃおもしろいな!」

シップのテレポータが破壊されている以上、出入り口の封鎖はこちらの逃げ場も同時に潰す。
それでも、二人はにやりと笑って答えた。

メイリーン   『それはよかったですにゃ。それではもう一個お知らせを。滑走路の修復用ドローンを飛ばしますにゃ』
メイリーン   『あちらの目的が妨害である以上、恐らくは撃ち落とされるでしょう。というわけなので、ドローンの護衛もお願いしますよぅ』
イフェスティオ 「護衛対象が増えるってか」
シャムシール  「へっ!?増えるの!?」
メイリーン   『全部で五機。予備も含めて。最低二機は死守してくださいね? 滑走路側ですから、そこから敵が抜けなきゃ大丈夫ですにゃ』

ほぼいつも通りの調子で話すメイリーンだが、今までになく早口で伝え終えると、警告音と共に出入り口のドアがロックされた。
同時に、宇宙側から修復用ドローンが飛び、損傷した滑走路に張り付く。

イフェスティオ 「なるほど、撃つ奴を優先的に殺せってことだな!」

外からの増援を断たれたフォトン体は慎重になったのか、距離を取り始めた。
直接ドローンを狙える遠距離体から各個撃破する中、シャムシールが口を開く。

シャムシール  「イフェス、ここちっと任せてもいいか。」
イフェスティオ 「ん?……。いーぜ。」
シャムシール  「よーし。じゃあちょっと行ってくる。すぐ戻るからなー」
イフェスティオ 「おー、さっさと戻って来いよー。めんどくせーからなー」

まるで緊張感の無い調子で、シャムシールが敵の真っ只中に躍り出る。
そして、両手の二槍を真上に伸ばし、天井に突き刺した。
当然がら空きの状態であり、敵から見れば完全に無防備。一斉に周囲のフォトン体が武器を振りかぶる。

シャムシール  「お前らの相手は、そこのおにーさんがしてくれるってさ!」
イフェスティオ 「見えすいた罠に引っ掛かってんじゃねーよ!!」

光の武装がシャムシールを捉える寸前、一気にワイヤーを巻き取り真上に跳躍。
殺到した刃は虚空を切り、隙の生まれた光体達を、背後から肉薄したイフェスティオが斬り伏せる。

イフェスティオ 「人間だったら、気が付いたかもな?」

蹴散らされる光体達を横目に見て、空中ブランコの要領で宙を跳ぶシャムシールが着地した。

シャムシール  「おー!ナイスタイミング!」

纏めて数体を塵に帰され、光の軍勢の勢いも流石に落ちている。
しかし息を吐く間も無く、メイリーンの手元のシステムが警報を上げた。

メイリーン   『ああもうっ、ドローンのナビ中だっていうのに! ストップお二人とも! 棚側! 柱の影! 高フォトン反応! 銃です!』

イフェスティオが目線だけを伝えられた座標に向ければ、チャージ体制に入っている光体の姿がある。

メイリーン   『この形態だとエンドアトラクトですねぇ! 壁ごと撃ち抜く気ですよ! 当たれば二機は堅いです、止めてくださいにゃっ!』

すぐさま潰さなければならないが、二人とも付近の敵の対処に追われ、そう簡単に辿り着くことはできない。

イフェスティオ 「うぃる!!」
シャムシール  「うぇっ!?こンの、忙しい時に!」

シャムシールが、振り向き様に自在槍を投げ飛ばした。
距離や咄嗟の攻撃もあり、直撃とはいかないが、槍はフォトン体の足元を抉る。
不安定な足場で高出力射撃は成らず、光体は体制を建て直し、もう一度チャージを試みた。
だが、その隙を逃す彼らではない。

シャムシール  「イフェス!つっこめ!」
イフェスティオ 「りょーかい!!!!」

一直線に奔る槍により空いた道を、低く腰を落としたイフェスティオが真直ぐに駆け抜ける。
チャージ中の光体に一息で肉薄すると、ニヤリと口を歪めた。

イフェスティオ 「…あめーんだよ」

ぼそりと呟き、銃ごと叩き伏せる。力任せの斬撃はぐしゃりと敵を潰した。

シャムシール  「っし!」
メイリーン   『シップごとぶち抜かれるのは防げましたね。ドローンも頑張ってくれてますよぅ、修復率74%! 推定所要時間8分ですにゃ』
イフェスティオ 「よし、後少し……」
シャムシール  「は、はぁ・・・っ。あと8分かー。」

攻めの切札を失い、浮足立つフォトン体。数も一桁にまで減っている。
直接戦闘で敵わないと判断したのか、遠距離戦に切り替え、二人では無くドローンを狙い始めた。
ライフルによる射撃で、ドローンの内1機が貫かれ四散する。

イフェスティオ 「ってナメたことしてんじゃねーぞ!!」
イフェスティオ 「こっち見ろってんだ!!おめーらの相手は、俺だっつの!!!」
シャムシール  「ははっ、そーそー、俺も構えっての!」

だが、無防備な光体では二人を止める術は無い。
一体、また一体と狙いをつけていた光体が切り伏せられ、数を減らしていく。

イフェスティオ 「遠く居るんじゃねぇ!!こっちの攻撃届くところにいろっつの!」
イフェスティオ 「こちとらリーチみじけぇんだ!!狡いぞ!!!」
シャムシール  「おー、がんばれがんばれー!」

若干理不尽な事を叫びながら、刃が、槍が、反撃の術を持たないフォトン体達を蹴散らす。
もはや戦局は完全に傾き、ついに残る敵は1体のみとなる。

イフェスティオ 「最後、ひとっ……?!!」

最後の1体に、イフェスティオが斬りかかった時だった。
突如光体が無機質な咆哮を放つと同時に、それまでに斬り伏せ霧散した筈のフォトンの光が、最後のフォトン体に集まって行く。
以前起こった現象と同じだった。 光は巨大に膨れ上がっていく。

シャムシール  「…………」

その姿は、宛ら地をのたうつ巨人。
嫌悪感を誘う耳障りな呻きを漏らしながら手足を這いずらせる、異様な姿がそこにあった。

イフェスティオ 「……これ、は……」
シャムシール  「……きもいな。」
イフェスティオ 「きもいってどころのさわぎじゃねーだろ……えっぐ……」

嫌悪感も露に、吐き捨てる二人。
しかし顔を顰めている暇も無く、巨人が悲鳴とも呪詛ともつかない、耳障りな咆哮を上げると同時に、その体から四方にレーザーが拡散する。
シップや滑走路は直撃を免れたが、出入り口の扉がロックごと撃ち抜かれた。

イフェスティオ 「んなっ?!!!反則だろそれ!!!!」

当然、増援を妨げるものが消え、数体のフォトン体が庫外から殺到する。

シャムシール  「――っ!!?」
イフェスティオ 「っ、もう一度アレ食らったら…!!クソッタレが!!猫娘!!後何分だ!!!!」
メイリーン   『あのでっかいの、まずいですね……たまたまシップは無事でしたけど、あんまりアレを連発されれば最悪そこが潰れますよぅ』
メイリーン   『現在88%。時間は…早くて三分ですねぇ。三分間、でっかいのを防ぐ方法を考えますにゃ、とりあえ、ず、これっ』

タン、というタップ音の後、シャムシールの足元付近が軽く振動。
二枚のシールドが光の跡と共に現れた。

シャムシール  「えぇっ!?なん、なんだぁ!?」
イフェスティオ 「うぉっ、なんだそれ!!」
メイリーン   『一旦はそれを盾になんとかしてくださいにゃ。本部でテスト中の光学シールドです、さっきのビーム程度なら耐えるはずですよ』
シャムシール  「こ、こういうのあるんでしたらさぁ~~~も~~~」
イフェスティオ 「最初から出してくれって!!!」

油断なく巨人と相対しつつ、露骨な不満を口に出す二人。
メイリーンも負けじと通信機越しに叫び返す。

メイリーン   『テスト中なんですってば! これも無断使用なんですよぅ、あとでメイちゃんが始末書書くんですからねぇ!?』
イフェスティオ 「始末書?バックレろ!!!!もしくはこれが使用テストだってごまかせ!!!!」
メイリーン   『とにかくそれで耐えてくださいにゃ、その間に止める手段考えますから! 次のツールのインストールに約一分! 頼みましたよぅ』
シャムシール  「はあーい、がんばります・・・!」
イフェスティオ 「…もうバテたか?歳なんじゃねーの??」
シャムシール  「うるっせーな!こっちはお前みたいに体力ありあまってねーんだよ!」

会話の中で、二人は呼吸を整える。五十に迫る敵との戦闘は相当な体力を奪っている。
特にシャムシールは顕著で、肩で呼吸していた身体を無理矢理起こした。

そんな二人の事情を汲む訳もなく、再び耳障りな咆哮と共に、巨人の身体からレーザーが撒き散らされる。
見境のない出鱈目な攻撃は、味方である筈のフォトン体すら貫いた。

イフェスティオ 「敵味方お構いなし…ってか。……ザコより、アレを優先だ、な」
シャムシール  「・・・っ!野蛮なこったな」

ひょいひょい、と器用に避ける二人。二枚のシールドがレーザーを遮り、シップ方面には届かない。
連続掃射の影響か、巨人の動きも鈍っているようだった。

反撃の機は今しかない。

メイリーン   『よしっ、もうどうせ書くなら何枚でも一緒ですにゃ! インストール完了! これもいっちゃえ、えいっ』

二枚のシールドの隙間に配置される形で、円筒型の大型機械が現れる。
弩のような機構が取り付けられている、カタパルトの砲台のような外観。

シャムシール  「なんだ、これ」
メイリーン   『いいですか、それはフォトン吸収型アンカーですにゃ。よーく狙って、あいつの胴体ぶち抜いてください』
メイリーン   『しっかり刺さりさえすれば、あとはこっちのボタン一つでぎゅいーんと吸っちゃいます。お願いしますよぅ!』
イフェスティオ 「俺らが狙いつけるの?!!」
シャムシール  「えええ!!!??」

全身がフォトンで構成されている巨人に対しては、確かに切札に成り得る兵器だ。
だが、当然普段実戦利用される事のない試作装置、二人に使用経験はない。

メイリーン   『修復率は残り6%! 正念場ですっ。当然邪魔してくるでしょうから、コンビネーション見せてくださいねぇ!』
シャムシール  「えっちょっ!まって!こんなの使ったことないですって!」
イフェスティオ 「くっそ…うぃる!!頼んだ!!抑えるのはやるから!!」
シャムシール  「そうくるかーーー!!!」

返事を聞く前に、イフェスティオが敵の真っ只中へ躍り出た。
のたうつ巨人がそれを迎撃する。迫るイフェスティオを握りつぶさんと、おぞましい咆哮と共に手を伸ばす。
当然、シャムシールもそれを黙って見ているわけにはいかない。

メイリーン   『んもーっ、思い切り引っ張って思い切り離せばいいんですよぅ! 男なんだから度胸見せるにゃっ!』
シャムシール  「くっそおおお!!やってやらああ!!」

メイリーンの一喝に弾かれるようにして、シャムシールが装置に転がり込み操縦桿を握る。
前線ではイフェスティオが巨人の攻撃を間一髪で避け、指を一本切り落とすが、ほぼ効いている様子はない。

イフェスティオ 「ほんっ気で、化け物だ…っ!!」

バランスを崩した一瞬の隙を突かれ、ついに巨人の手がイフェスティオを捕らえる。
胴を握る力は徐々に強められ、骨が軋む嫌な音が聞こえた。

イフェスティオ 「がっ……っざ、ふっざけ…!」
シャムシール  「イフェス!」

巨人は腕を大きく振り上げ、イフェスティオを叩きつけようとしている。まともに受ければただでは済まないだろう。
シャムシールが狙いを定める。当然、装置に乗っている間は武器を持つ事もできず、完全な無防備だ。
取り巻きのフォトン体が襲い来る。それでも、限界まで弦を引き絞り、巨人の頭部に照準を合わせる。

シャムシール  「やらせるかッ!」

巨人が床に片腕を振り下ろす間際、放たれた弩は巨人の頭蓋を捉えた。
この世のものとは思えないおぞましい悲鳴と共に、巨体がのたうち回り、残った周囲のフォトン体すら巻き込み引き潰される。
解放されたイフェスティオは辛うじて着地し、げほげほと咽ながらも起き上がった。

イフェスティオ 「…やるじゃん。」
シャムシール  「ばっかお前・・・!無茶苦茶してんじゃねぇよ・・・!」

すぐさま装置を飛び降り、シャムシールが息を切らすイフェスティオの元へ駆け寄る。
息を整えながらも、へらりと笑って返した。

イフェスティオ 「だってうぃるが仕留めてくれるだろ、ちょっと無茶しても平気だって」
シャムシール  「・・・お前・・・、俺のこと、信用しすぎ・・」
メイリーン   『見直しましたよぅシャムシールさん。じゃ、あとはお任せくださいにゃ。えいっ』

通信機から流れるメイリーンの軽い声音と打って変わり、続いて嵐のような轟音が響く。
竜巻が巻き起こっているような激しい音と共に、巨体に刺さったアンカーが光の奔流を吸収していく。
轟音に混じる、未練のような巨人の嘆き―――それも五秒ともたず、光の巨体は霧散し消えた。

イフェスティオ 「うっそだろ……」
シャムシール  「終わった、のかな・・・」
メイリーン   『……お掃除完了ですねぇ。丁度、キャンプシップも修復完了、滑走路側もまもなく完了します。再発進準備、カウント開始です』
シャムシール  「あっ、出るみたいだぞ」
メイリーン   『十、九……』

メイリーンがカウントを読み上げると同時に、シップ内から通信が入る。
フレイの声だ。

フレイ     『はらはらしたけど、大丈夫みたいだな。……助かったぜ、三人とも』
イフェスティオ 「……一つ貸しだからな!!ちゃんとケジメつけてこいよー」
シャムシール  「あはは、どうもー。フレイさん達は、これからが正念場ですね。がんばってー。」
マリン     『お二人とも、ありがとうございました……! どうか、ご無事で帰還を―――』

通信機越しのマリンの言葉が終わるよりも先に、メイリーンのカウントが0を告げる。
発進音と共に、キャンプシップは宇宙に飛び去った。

シャムシール  「はは、それはこっちの台詞ですって。・・・・・・・・・」
イフェスティオ 「…つかれた。」
シャムシール  「はーーーー・・・しんっど」

遠ざかり、すぐに見えなくなるシップは、二人の任務完遂を意味する。
フォトン体も全て蹴散らされ、出艇庫にいるのは二人だけ。
心からの溜息を吐き、二人はその場に座り込んだ。

イフェスティオ 「ほんっと、朝っぱらからしんどすぎだろ…… …なーうぃるーどっかで飯食ってこうぜ……」
イフェスティオ 「疲れたし腹減った。猫娘も連れてってさー」
シャムシール  「だな・・・。ちょっと食べて帰ろう。それにしても、イフェスもメイリーンさんも、おつかれさん。です。」
イフェスティオ 「おー、おつかれ…」
メイリーン   『ええ~、当然奢り…で……』

床に座り込んだまま、こつん、と二人が拳を合わせる。
しかしその時、通信の向こうから高い警告音が聞こえた。

イフェスティオ 「んえ…?」
メイリーン   『や、ば…ッ、……フォトン収束反応! アンカーから溢れたみたいですね…っ、来ますよ!』
シャムシール  「はぁっ!?」
イフェスティオ 「は…?!!」

弾かれるように立ち上がる二人。メイリーンの言葉通り、二人の目の前で光が収束していく。
人三人分程に膨れ上がった光の粒子は、所々が消えかかってはいるが、辛うじて獣のような形態で顕現した。

出現と同時に、獣は狂ったように暴れまわる。爪は壁や床を裂き、尾を叩き付け破壊の限りを尽くす。
そして次に狙いを定めたのは、出入り口の階段。破壊されれば逃げる手段はない。
この出艇庫ごと二人を葬り去るつもりなのだろう。

シャムシール  「てっ、めェ・・・!」

怒りを露にし、低く唸るシャムシール。
しかしその時、いくつもの声が重なったような、不安定な声―――のようなものが聞こえてくる。

《ナゼ……キサマ達ハタタカウ……?》
《アークスハ、ダーカーヲ殺シ、生物ヲ殺シ、ソシテイズレ我々ノヨウニ自ラモ散リ、消エテイク……》
《ソンナ不毛ヲ、キサマ達ハイツマデ続ケルツモリダ……》
《ダカラコソキサマ達モ、ココデ我々ト共ニ……》

戦場で散ったアークス達が遺した、消える事のできなかったフォトン。
未練、嘆き、後悔が、その集合体である光の獣から声となって聞こえる。

だが、それに耳を塞ぐことなく、二人のアークスは正面から対峙した。

イフェスティオ 「知るかよそんなの!!!!勝手に自己完結して巻き込むんじゃねぇよ!!」
イフェスティオ 「俺はな、守るもんがあるんだよ!!!俺が生きてるのを望むやつが居るんだよ!!そいつら守ろうとして、」
イフェスティオ 「傷つけるやつから守って、戦って何が悪い!!不毛とかそんなん知ったことか!!!手の内のもんで手一杯だっつの!!!」
イフェスティオ 「……こいつも…そっちの猫娘も。俺の手の中のもんを殺そうってんなら、絶対に許さねーぞ」

シャムシール  「・・・・・・あんたが誰だか知らないけど、やっぱり俺にも戦うことになったって、」
シャムシール  「譲れないものはあるんです。それに、俺の死に場所は俺が決めるよ。・・・悪いけど、一人で逝ってくれ。」

武器を構え、剣と槍を合わせる二人。
それに対して、獣は少しの沈黙の後――― 出入り口ではなく、二人に真っ向から立ちはだかる。

《我々ハ……生キタカッタノダ!!》

イフェスティオ 「……。」

光の獣が、もはや消えかかった前足を振り上げる。
それを見据え低く抜剣を構えるイフェスティオの表情は、憐れみの色か。
シャムシールもそれに続き、二人で視線を合わせ頷く。ワイヤーを伸ばすことなく、強く握った槍を構える。

次の瞬間、二人の剣と槍は、同時に獣の胴を貫いていた。

《……ソレガ……貴様ラノ意志カ》

獣の爪は、何を裂くこともなく粒子と化している。

《……先ニ……地獄デ……――――》

光の獣は、断末魔を上げることも無く、静かに粒子と消えた。
イフェスティオも、シャムシールも、武器を下げて目を伏せる。
残滓である光の痕が、まるで涙のように見えた。

イフェスティオ 「……あぁ、待ってろよ。何十年後かに、行ってやるよ」
シャムシール  「・・・・・・。(たぶん、すぐ追いかけますよ)」
メイリーン   『……周囲を探査。…生体、及びフォトン反応無し』
メイリーン   『敵性反応の消失を確認。……完全に消滅しましたにゃ。これでほんとに、終わりです』
イフェスティオ 「…そーか。」
シャムシール  「・・・・・・っ、し!・・・・・・終わりだ・・・!」

振り切るように手を叩くシャムシール。イフェスティオは、何かを噛み潰したような表情で黙り込んでいる。

イフェスティオ 「……。」
シャムシール  「なんでも一人っきりにするのには、お前ほんと弱いんだなー。」
イフェスティオ 「う、うるせ…っ」
イフェスティオ 「お前に言われたくねーよばーかばーか」
シャムシール  「はは、まぁ、否定は出来ないな」
イフェスティオ 「こんな時ばっかり兄貴面しやがって… ……ったく。」

シャムシールにぽんと背を叩かれ、文句を言いつつも、幾分か気を持ち直したように見えた。
切り替えるように、両手で頬を叩き声を上げる。

イフェスティオ 「よし、メシ行こうぜ。猫娘ー!おごってやっから行くぞー」
イフェスティオ 「おごるのこいつだけどなー」
シャムシール  「俺かあああ!!??」
シャムシール  「ちくしょう!いいけどちくしょ!いいけど!!」
イフェスティオ 「兄貴面、するんだろ?」
シャムシール  「言うと思った!!いいよ!二人とも好きなもの食べて!」
メイリーン   『メイちゃんとしてはどっちでもいいんですけどねぇ。あ、ちゃんとデザートもつけてくださいよぅ?』
イフェスティオ 「だとよ?」
シャムシール  「はいはーい!じゃあフランカさんのところでいいですかね。こっちはとりあえず地上に戻りますー。」
メイリーン   『にゃはは、そしたらテレポーター転送しますから、指定座標まで出てくださいにゃ。迷子にならないでくださいね~? 座標は~』

任務完了。
荒れた庫内には二人分の足音と、三人分の話し声が遠く響き、やがて消えていった。

  • 最終更新:2017-05-02 18:53:09

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード