二番目の上昇A 1

早朝、静寂に包まれたシップ発着場。リヒャルダが手配した小型出艇庫である。

リュケイオンへのシップは、急な用向きである事もあり、用意できたのは1隻。
よって四人。フレイ、ルリ、ロミオ、そしてマリンが出撃メンバーに選ばれた。
シップの護衛役としてイフェスティオとシャムシールが残る事となり、出撃する四人と軽い会話を交わした後、マリンを覗く三人は先にシップへと乗り込む。

マリン     「……では、ご迷惑をおかけしますが…… 後はよろしくお願いします、シャムシールさん、イフェスティオさん。」
イフェスティオ 「あいよ、任せとけって。」
シャムシール  「はーい。そちらも、気を付けて行ってきてくださいね。」

深々と頭を下げるマリンに対して、二人の様子はいつもと変わらない。

マリン     「……ありがとうございます。 お二人も、ご自身の身を最優先にしてください。」
マリン     「あちらがどんな手を打ってくるか、まだわかりませんから……」
イフェスティオ 「っても…… 結構な雰囲気の場所だけど…ホントになんかあるのか?」
イフェスティオ 「静かなもんだけどな。向こうさんも寝てんじゃねーの??」

周囲を見渡して眉を顰めるイフェスティオ。
庫内は無機質に静まり返り、敵の気配も当然感じられない。

シャムシール  「お気遣いありがとうございます。まあこっちは・・・こいつがいますから、何とでもなりますよ。」
イフェスティオ 「え、何それどういう意味。盾にでもするってか」
シャムシール  「盾・・・囮かな」

にこ、と爽やかに笑うシャムシール。
いつもの調子でふざけ合う二人に、マリンも思わず笑みを溢す。

マリン     「……杞憂に終われば、何よりなのですが。」

その時、ピピ、と通信音が響く。
後方からオペレートを担当するメイリーンの声だ。

メイリーン   『おふたりはともかくとして、メイちゃんもいますから、大丈夫ですにゃ。安心していってらっしゃい、ですよぅ』
イフェスティオ 「猫娘も、な…」
マリン     「……はい、メイリーンさんの腕も信頼していますから…… よろしくお願いします。」

マリン     「では、待たせてしまってもいけないので……私はこれで。 お二人とも、本当に……お気をつけて。」

もう一度深く頭を下げると、マリンは踵を返し、三人の待つシップへ乗り込む。
それを目で追って、イフェスティオは小さな溜息を吐き、シャムシールはひらひらと手を振り見送った。

イフェスティオ 「……。」
シャムシール  「いってらっしゃーい、がんばって下さいね」
イフェスティオ 「…ま、あいつらが一緒なら心配はねーけど。」
シャムシール  「あぁ、現地メンバーがあれだから。問題はないさ。」
イフェスティオ 「向こうはな。……いけ好かねぇ場所だ。」

再び、イフェスティオが無機質な出艇庫を見渡した。
固い表情で眉間に皺を寄せ、喉の奥で唸る。

そして静かな庫内に、メイリーンのアナウンスが響いた。

メイリーン   『それじゃ、そろそろ出発ですよぅ。全員、乗りましたね。自動操縦システム起動、…シークエンス終了。発進まであと30秒ですにゃ』

シャムシール  「同感だなー。ここで一仕事は、めんどくさそうだ。」
イフェスティオ 「襲撃にはおあつらえ向きの壁、柱……ま、来るよなぁこれ。」
シャムシール  「なんだ、心細いのか?」
イフェスティオ 「ばーか。んなわけある……」

それは何の前兆も無かった。

不意に煌く光弾が2~3発、キャンプシップとその滑走路に着弾。
炸裂音と共に、シップが噴煙を上げた。

イフェスティオ 「……っ!! ほら来やがった!!」
シャムシール  「! シップの方だ!」

周囲を取り囲むように、ぼんやりと人型を模った光が次々と現れた。
以前廃墟でイフェスティオ達と交戦した、フォトンの具現体に相違ない。

イフェスティオ 「………。おでましか。」
メイリーン   『早速ですかぁ! まったくせっかち……、……っ!?』

確かめるように、二人が武器を握る。
同時に通信機の向こうで、メイリーンが鋭く息を呑む音が聞こえた。

シャムシール  「お仕事お仕事、ってメイリーンさん?!」
メイリーン   『なん、ですこの数! ……シップ周辺に敵性反応! 庫外…庫内、併せて…さんじゅう…ううん、………五十いきそうですにゃ!』
メイリーン   『さっきまで何の反応も……っ、うまいことジャミングされましたねぇ…!』

メイリーンが睨むレーダーには、適正反応を示す光点が夥しい数表示されている。
通信機越しに、彼女が対応に慌しく動いているのだろう気配が感じられた。

イフェスティオ 「50、50ね…… また大盤振る舞いだな」
シャムシール  「ひえっ!そんなにいるんですか!・・・ちょっと期待され過ぎじゃないですかね。」
イフェスティオ 「あちらさんも本気ってわけか……選り取り見取りじゃねぇの。」

フォトンの光で模られた、表情の無い不気味な貌が一斉に二人へ向く。
近接武器、射撃武器、法撃武器、手にする模倣武器は個体により様々だ。

メイリーン   『シップ内の皆は……無事、みたいですにゃ。感知ヘルス異常なし、……ですが、滑走路及びテレポート機能に障害アリ』
イフェスティオ 「んだと?」
シャムシール  「滑走路!?・・・シップは出られますか?」
メイリーン   『これじゃ発進できそうにないですにゃ。内部のテレポーターも死んじゃったみたいですね……自動修復…所要時間計算…』
メイリーン   『………自動修復機能による修復、およそ30分…もしくはそれ以上かかりますにゃ』

深刻に被害状況を報告するメイリーン。
内部テレポータの故障は、修復までシップ内に閉じ込められる事をそのまま意味する。

同時に、無線からシップ内にいるマリンの声が聞こえてきた。

マリン     『お二人とも、そちらは大丈夫ですか!?』
マリン     『こちらは全員怪我はありませんが、外に出られなくて……! そちらはどうなっていますか!?』
イフェスティオ 「おーー!!こっちはいいからテメーの心配しとけ!!!なーんも問題ねぇよ!!!」
シャムシール  「あっマリンさーん!ご無事で良かった。こっちは心配いらないですよー!」
シャムシール  「頑丈な盾がありますからー!」
イフェスティオ 「ふっざけんな!!!」
シャムシール  「あーそうかそうか、イフェスは心細いんだもんなー」
メイリーン   『……、まったくもう、どうして男の人ってこう虚勢を張るんでしょうねぇ。…現実にするしかなさそうですけど!』

それぞれ、剣と槍を抜く二人。
ふざけ合ってはいるが、到底楽観できる状況ではない。

マリン     『無理だけはしないでください……!いざとなれば、シップを破壊してでも外に出て加勢します!』
イフェスティオ 「それは止めろ!!!!!フレイ!!!テメェ自分の女位抑えとけ!!!!!!」

マリンの通信の後ろから、大きなフレイの叫びが聞こえるが、明瞭ではない。

シャムシール  「マリンさんは、マリンさんのすべきことをしてください。」
シャムシール  「ここは俺たちが引き受けますよ。」
イフェスティオ 「ま、その為に来てるんだしな。」
メイリーン   『…赤毛もなんとか出られないか試みてるみたいですけど、まあ、無理でしょうにゃ。……おふたりとも、やるしかないですよぅ』

マリン     『……! 何か、勘違いをされているような気もしますけど……! お二人とも、とにかくよろしくお願いします……!』
イフェスティオ 「おーおー言い訳はあとで聞いてやるわ。さて、ここがエンドラインってな。」

それぞれの武装を手に、じりじりと迫るフォトン具現体。
個体差があるとは言え、強力な個体であれば1体で見習いアークスに迫る程の実力がある。
外にいるものも含めれば50に迫る軍勢に対し、キャンプシップを背にたった二人で対峙する。

イフェスティオ 「こういう任務、あったよな……」
シャムシール  「はは、普段の任務よりは気合い入るな。守るのは、あの人たちだから。」
イフェスティオ 「まー、ここであいつらに恩売るのも悪くねぇって、な!!」

フォトンの軍勢が、一斉に襲い掛かった。
イフェスティオの抜剣と、シャムシールの自在槍が、迫る第一陣を裂く。



  • 最終更新:2017-05-02 18:50:05

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード